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読書記録
しばらくの間、「勉強」というか「修行」と課して、フランス語の本を読んでいました。そういうわけで読書速度がガタ落ちです。

b0062149_136463.jpgまずは Georges Perec の W ou les souvenirs de l'enfance 『W あるいは子供時代の思い出』 (Gallimard)。子供の頃の思い出と、ペレックが10代初期に書いたものを手直ししたという物語が交互に配置されています。思い出といっても断片的で、非常にあいまいだったり間違い覚えをしていたりで、正確ではありません。また物語のほうは、亡命して名前を変えてひそかに生活している男が、今の名前が実在の少年のものであったことを知らされ、その少年が消息不明になったらしい「W」という島へ探しに行く、というところまでは筋があるものの、後半からはその「W」という奇妙な島についてえんえんとルポルタージュ風に語られ、前半の物語は忘れ去られてしまったかのようです。「W」のあらゆるものごとの中心は「スポーツ」なのですが、自由で楽しい雰囲気どころか、おかしな規則や慣習でがんじがらめになっている感じです。このスポーツ島に関する記述が非常に事細かで、後半からはすっとばして読んでしまいました・・とはいえ、単に時系列で出来事を並べるのではなく、記憶のあいまいさや、子供時代のテクスト、およびそれに対する現在の感じ方もひっくるめて、「自分」をとらえようとする面白い「自伝」だと思います。

b0062149_1515966.jpg次はアゴタ・クリストフの L'heure grise 『灰色の時』(Seuil)。4つの戯曲が収められています。最初の John et Joe 「ジョンとジョー」がとぼけた味わいで楽しい。2人のやりとりは時に『ゴドーを待ちながら』のウラジミールとエストラゴンを思い出させます。フランス語も簡単ですいすい読めてうれしい。2番目の La clé de l'ascenseur 「エレベーターの鍵」は、「いつか王子様が」モノを逆手にとった皮肉っぽい戯曲。3番目 Un rat qui passe 「通り過ぎる鼠」は、舞台が2分割され、人物が双方を行き来し、メタ戯曲にもなっている難解な作品。実際にはどんなふうに演じられているのか見てみたいです。最後の L'heure grise ou le dernier client 「灰色の時 または 最後の客」は男女のグダグダした会話がえんえん続く(でも結末は衝撃的)。

b0062149_1383560.jpg最後はジャン=フィリップ・トゥーサンの最新作(といっても出たのは去年)でメディシス賞を受賞した Fuir 『逃げさる』(Minuit)。前作『愛しあう』の続編で、上海・北京・イタリアの小島で展開される3部構成の物語です。中国での話が面白く、謎の人物チャン(張)と話者が心動かされるリー(李)という2人の中国人男女が魅力的です。サングラスをかけたり、表情がなかなか読めないチャンの描写を読んでいると、いつしかウォン・カーウァイ監督をイメージしてました。そうなるとリーはチャン・ツィイーかフェイ・ウォンあたりかしら。
第3部に入ると、話者の存在感が希薄になり、実験的な試みも見られるのですが、前の2部とは雰囲気が異なっていて、浮いているようにも思えます。
トゥーサンの小説はデビュー頃と比べると、だいぶ作風が変わってきました。1文1文も長くなって、蛇行するようなものも多くなりました。特にこの作品は感傷的な表現が多く、特に元恋人マリーに関する記述はかなりロマンティックで、飄々とした彼の文章に慣れている読者のなかには困惑を覚える人もいるかもしれません。ユーモアもかなり控えめになってます。『愛しあう』は淡白さと感情的な部分のバランスがいい具合だなと思っていたのですが、今作は後者のほうが勝っているようで、好き嫌いが分かれるんじゃないかな〜。
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by poyance | 2006-08-18 01:54 |
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