映画のエントリーが多くなっていますが、読書も細々と通勤中に続けています(そのかわり音楽をあまり聴いていない)。ここ数ヶ月は新しいものより、かつて読んだ作品を読み直すことが多かったです。というのも、最近は新訳ブームらしく、好きな作家の作品が次々と再出版されているからです。特にもともと作品数の少ないオースティンなどの新訳は、新作の気分で読んでいます。
まずは、村上春樹の新作『東京奇譚集』(新潮社)。長編もいいけれど、短編の春樹さんもとても好きです。最初の短編は『回転木馬のデッドヒート』を思い出させる、偶然が重なる作品で、不思議な味わいをもたらしてくれます。その後の短編も、このところの春樹さんの作品に出てくるモチーフに通ずるものが多く、とはいえマンネリ感はあまり覚えることなく楽しく読めました。 お次はサマセット・モームの代表作。 『月と六ペンス』(岩波文庫) 芸術という「魔」に取り憑かれ、周囲の人間などまったくおかまいなしに振る舞う画家ストリックランドは、ポール・ゴーギャンをモデルにしたそうですが、かなりデフォルメしてあるようです。このショッキングな人物造形と、モームの語りのうまさ(ただし、冒頭は少々だるい)が小説を成功させています。 次に恩師で古本探しの達人である I 先生に探していただいた田山花袋の本を。 『縁』(角川文庫) 『蒲団』の続編というべき作品で、前作の芳子さんにあたる敏子さんに今回も主人公がさんざんふりまわされてます。駆け落ち、妊娠騒ぎを起こしたうえ、養女にまでなってるし。しかし今回の主人公は前作よりは一歩退いた地点で事態を眺めていることが多く、泣きわめいたりはしていません。読む側からしたらそれが物足りないといえば物足りない。「もう若くはない」というフレーズが全体のキーワードとなっています。 この後、ヘンリー・ジェイムズの 『ねじの回転 心霊小説傑作選』(創元推理文庫) 『ねじの回転・デイジー・ミラー』(岩波文庫) を。前者は幽霊ものの短編数編が入っています。『ねじの回転』の解釈はいろいろあるようですが、今回あらためて2度読み返し、幽霊潭というよりも主人公の妄想もののように思えてきました。後期に増えてくる「思い込み小説」にも通じてくるし。それでもさまざまな読み方を許してくれる点が、この作品の面白さであることは明らかでしょう。解説にあった「グロウス夫人陰謀説」というのがどんな読み方なのか、とても気になる・・ 最後はオースティンの2作。 『高慢と偏見』(河出文庫) 『エマ』(ちくま文庫) 『高慢・・』はカバーおよび冒頭に先日観たBBC放送のドラマの写真が使われているので、読んでいるといやでもコリン・ファースのダーシィさんが頭に浮かんできます。この小説でいちばん面白い人物はやっぱりエリザベスのお父さん、ベネット氏と、エリザベスにふられるコリンズ氏ですね。 『エマ』もグヴィネス・パルトロウのイメージがずっと離れないまま読んでいました。今回の新訳は会話部分が少し不自然で、それが引っかかってなかなか読み進めませんでした。現代語を無理無く用いて、そのうえ当時の雰囲気も残しながら会話を訳すのは至難の業なのだなあと実感しました。
by poyance
| 2005-10-30 15:52
| 本
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