休みに入って例のごとく読書量がガタ落ち。ここに挙がっているのは6月後半〜7月に読んだ本です。
ヴァレリー・ラルボーが読みたいなと思っていたら、ちょうど岩波文庫から短編集『幼なごころ』が出ました。子どもの心を描かせたらほんとうにうまい人です。前に一度読んだけれど、冒頭の「ローズ・ルルダン」がいちばん好きです。訳者の岩崎力さんがみずから撮影した写真がところどころに挿入されていて、それがイメージをかきたててくれます。訳文自体も美しかった。 『閉ざされた庭』 『輪廻の暦』(萩原葉子) ちょうどこの本を読んでいるときに、萩原葉子さんの訃報を聞いてびっくりしました。『蕁麻の家』の続編となるこの2作、実の祖母やおばたちに冷たく扱われ、それから逃れたいがために新しい家庭を作ったのに、さらに耐え難い日々が続き、おまけに実の母親と妹にも苦しめられ‥と壮絶な内容です。3日と持ちそうにないこの地獄のような日々を、どうしてこうも冷たいタッチで描けるのだろうか。 異常な状況なのに(特に母と妹の行動がすごすぎる)おかしさすら感じられるのは、やはり文章の力なのでしょう。 この後『アナイス・ニンの日記』を読みました。本来は日常の記録が淡々と書かれている日記を読むのが好きで、これもそうだと思って読み始めたらそうではありませんでした。彼女はシュルレアリストで、ここでは日常の記録というよりも、体験した出来事から誘発されるさまざまな思考の流れが綴られていて、かなり濃密。一気に読めず時間がかかりました。ヘンリー・ミラーとの関係や精神分析医とのやりとりなどは興味深かったです。「アントナン・アルトーと食事」なんて自分の日記に書いてみたい‥ これでちょっと疲れたのでその次は『東京に暮す』(キャサリン・サンソム)。1930年前後の日本に暮らしたイギリス人女性の手記で、日本の日常の暮らしがやさしい目でとらえられています。彼女は当時としてはかなり日本に理解のあった人ではないでしょうか。気難しい日本の職人さんもうまく扱っているようだし。さすがにたくあんと海藻は苦手なようですが。 最後に、と言っても読んだのはもっと前ですが、待望の『シネマ坊主2』(松本人志)が出ました。今回も面白かったです。独自の、とはいえ非常にまともな見方をしているなあと思います。「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「ロスト・イン・トランスレーション」の回が痛快でした。「松紳」でも言ってたけど、「ペーパー・ムーン」が相当好きなんだなあ。
by poyance
| 2005-08-18 21:55
| 本
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