ネットで注文したDVDがどかっと届いたので、まずは一番見たかったこの映画から鑑賞です。ポスターはフランス版もアメリカ版も素敵なので、今回どちらも載せてみました。
前作「8人の女たち」とはガラッと変わった雰囲気で、特に南仏に場面が移ってからは、陽光が活かされた美しい映像の連続です(今回もまたDVDの画質がとてもよかった)。この光と緑のあふれる爽やかな風景の中で、抑えた演出のもとストーリーは進行していきます。シャーロット・ランプリングとリュディヴィーヌ・サニエ2人の演技もすばらしく、それぞれの年代の女のいやらしさをうまく表現しています。特にシャーロット・ランプリングはとても抑制された演技なのですが、瞬時に不機嫌になったり、ほくそ笑んだりするときの顔の表情がすごいと思いました。 さて、後半は謎に満ちた展開になり、今までの情報が次第に不確かになっていきます。ジュリーは本当にジョンの娘なのか、はたまたジュリーは本当に存在したのか、ということすら曖昧になり、そのままエンディングを迎えます。いろいろと解釈はあるでしょうが、私には、ジュリーはすべてサラの創作であり、私たちは彼女が南仏で書いた小説をそのまま見せられていたのだと思えました。ジョンからのつれない電話がきっかけで、サラはまだ会ったことのないジョンの娘、ジュリーを作り上げ、現実と関わらせていきます(未公開シーンに彼女が汽車の中でブロンド娘に出会う、というものがありましたが、ジュリーの外見はそこから生まれてきたのではないでしょうか)。ジュリーには、サラが手に入れられないもの、例えば若さ、ジョンの愛、そして「フランス的であること」(陽気さや奔放さですが、これはあくまで「イギリス人」であるサラが抱いているイメージです。そしてサラは事あるごとに「イギリス人」であることを強調されます)が凝縮されています。当初はジュリーの方が優位に見えますが、ジュリーはジョンに捨てられた女の娘で、その母も亡くしたことがわかり、彼女が誘惑した男もサラに心変わりし、そして殺人という罪を犯してしまいます。そして最終的にジュリーがサラを頼り、母親代わりとして彼女を見るとき、サラはついに彼女より優位に立ちます。この物語を書くことによって、サラは彼女の嫉妬の対象に復讐し、別の出版社から発表することで、ジョンに復讐することになるのです。最後にサラがジョンの実の娘を見てわずかに笑みを浮かべるのは、自分自身が作り出したジュリーの方が、断然魅力的であることを確信したからではないでしょうか。この映画には、男女または女同士の愛憎のドラマのほか、作品を創作することや、イギリス的なものとフランス的なものの対立など、いろいろなテーマが含まれているように思います。 とはいえ、彼女のお腹の傷のことや、母親の小説の内容など、謎が残る部分は多々あり、マルセルとその家族の存在なども手伝って、ちょっとデヴィッド・リンチの映画も思い出させます。他の解釈もたくさんとあると思うので、ほかの人の意見もいろいろ読んでみたいですね。 最後に、偶然にも、この映画でまたフランクさんが不運な目に遭わされています。ちょっとヴィンセント・ギャロ風でいい感じの人なんですけど・・ #
by poyance
| 2005-02-20 01:26
| 映画
のっけから「ファイト、一発!」と叫びたくなるような展開で、全く眠くなりませんでした。昨今は天災続きなので、こういうストーリーも作り事には思えなくなってきましたが、トラブルがこうもてんこ盛りだと逆にソラゾラしくなってきます(特にオオカミのエピソードはいらなかったんじゃ・・)。ああいう異常気象ってありえることなのかなあ。可能性ゼロ、っていうことはないかもしれませんが、「本当に起こるかもしれない」と思わせるような設定の方がリアリティが出るんじゃないのでしょうか。洪水の場面にしても、高層ビル半分くらいの高さって・・(それも目前に迫ってくるまでなぜ誰も気がつかないの??)。スマトラ沖大津波のように、一見何でもなさそうで、実はものすごい力を隠し持っている、という現実のほうがよっぽど恐ろしいと思いました。
後になって考えてみると色々思うことはありますが、実際見ているときはそれなりに楽しんでました。東京都千代田区、っていう場面もあるんですが、チャイナな雰囲気が漂っていて、思いっきり怪しかったです。このほかトラブルの合間にアクションあり、友情あり、親子愛あり、そしてラブもあり・・ 飽きることはありません。かわいそうだったのは、大統領とフランクさんですね・・大統領も妙に影が薄いと思ったら・・。それにあの金持ちの子の弟はどうなったの?? 主役のジェイク・ギレンホール君はカワイかったです。相手役の女の子は「オペラ座の怪人」でこのところ脚光を浴びていますね。 これはレンタルDVDで見たんですが、DVDの画質がすごくきれいでした。これとは反対に、字幕がかすれてたのが残念です。 #
by poyance
| 2005-02-18 16:50
| 映画
『或る女』からずっと日が経ってしまいましたが、読書は細々と続けています。映画と違って本の感想は何となく書きにくいので、ついつい先のばししていたら、何を読んだかもあいまいになってしまいました。思い出せるものだけ挙げてみると
『神楽坂・茶粥の記』(矢田津世子) 『木乃伊の口紅・破壊する前』(田村俊子・途中で挫折) 『天上の花ー三好達治抄』(萩原葉子) 『愛の生活・森のメリュジーヌ』(金井美恵子・途中で挫折) などです。女性作家のものを続けて読みました。講談社文芸文庫さまさまです。この中では『天上の花』がダントツに面白かったです。「純粋な人」と接するにはこちらもエネルギーが要るなあと思いました。 この後またイギリスものが読みたくなって 『女相続人』『国際エピソード』(ヘンリー・ジェイムズ) 『大転落』(イーヴリン・ウォー) 『お菓子と麦酒』(サマセット・モーム) と続きました(ヘンリー・ジェイムズは英文学ではないけれど)。ヘンリー・ジェイムズはやっぱり面白いなあ。「大転落」は独特のユーモアに馴れると楽しめます。『お菓子・・』は最初がしんどかったんですが、中盤からは一挙に読めました。今度は「人間の絆」にトライしようと思います。今は『二人の女の物語』(アーノルド・ベネット)を読んでいますが、目下仕事が休みに入り、家にいると映画やテレビをどうしても見てしまうので、読書量は大幅ダウンしてます。読書はもっぱら通勤電車の中なので・・ 他にも森茉莉を読み返したり、林芙美子関係の本を読んだりもしましたが、それは割愛。 買った本は、色々ありますが、アジア関係の食文化と雑貨関連のものと、古本が多かったです。いちばん嬉しかったのは国書刊行会の『ヘンリー・ジェイムズ作品集』の読んだことのないものを手に入れたことです。装丁も美しくて気に入っています。ただ読むにはちょっと重たい本なんですが・・。 ところで、スカパーのシネフィル・イマジカでBBCのTVドラマ『高慢と偏見』を放送しています。3回シリーズの第1回を見たのですが、小説にわりと忠実で、色々思い出しながら楽しみました。ミスター・ダーシィはコリン・ファースが演じています。それ以外のキャストはあまり知らない俳優さんたちですが、なかなかイメージに合っていると思いました。特にミスター・ビングリーとミスター・ベネット(エリザベスのお父さん)はいい感じ。またオースティンが読みたくなってきました。 #
by poyance
| 2005-02-16 20:55
| 本
毎年この時期になると、「キネマ旬報」のベストテン発表号を買ってきて、去年出た映画のおさらいをします。我が家では映画館にめったに行くことがなく、たいていDVDを買うか、レンタルするか、もしくはWowow・BS等で見るかで、世間より半年から1年遅れで映画を見ているので、ちょうどこれから何を見ようか考えるのに、このキネ旬は便利なのです。ベストテンを見てみると、邦画部門はまったく見てないものばかり。「血と骨」と「父と暮らせば」はぜひ見たいなあ。洋画部門は3分の1も見てません。ベストテンのなかに韓国映画が4本も入っているのがすごいです。邦画も韓国に関係した内容のものがいくつもあるし、去年は本当に韓国パワーが炸裂してたのですね〜。そのような流れにまったくうといまま、過ごしておりました。「殺人の追憶」と「オールド・ボーイ」は見てみたいです。
ちなみに、ミクシィにも書いているのですが、去年の私的ベスト5(外国映画編・ミクシィでは3位までしか書いていませんが)は以下の通りです(これは去年見たもの、という基準で書いてます)。 第1位 アダプテーション(スパイク・ジョーンズ) 前半と後半の印象がこれほど違う映画もないでしょう。こんな変な脚本よく思いついたな〜。映像も圧倒的。 第2位 ミスティック・リバー(クリント・イーストウッド) とにかく俳優陣の演技が卓越してます。ショーン・ペンとティム・ロビンスももちろんすごいけど、私はケヴィン・ベーコンが一押しです。 第3位 青の稲妻(ジャ・ジャンクー) 今、最も好きな中国の監督。1作ごとにますます好きになります。少年達のうつろな表情が目に焼き付きます。 第4位 ドッグヴィル(ラース・フォン・トリアー) とにかく発想が面白いと思いました。悲惨な話ですが、俳優陣のしっかりした演技と深みのある映像に支えられています。 第5位 恐怖分子(エドワード・ヤン) 衝撃的なラストシーン。だいぶ前の映画ですが、内容は古びていません。この監督、新しい映画はもう取らないのかなー。 映像賞 イン・ザ・カット(ジェーン・カンピオン) 「ミスティック・リバー」とは対照的な、フワフワとした柔らかく、官能的な映像です。特に冒頭は息をのむ美しさです。メグ・ライアンの失敗作と言われているみたいですが、私はここでのメグは嫌いではありません(ところどころ本来この役をやるはずだったニコール・キッドマンに見えてしまうのですが)。逆に、相手役のマーク・ラファロが生理的にダメでした。 #
by poyance
| 2005-02-16 01:15
| 映画
「ボーン・スプレマシー」のCMに触発され、我が家ではやっと相当前に録画した第1作目の方を鑑賞です。全体を通して飽きさせない作りになっていて、ジェイソン・ボーンがパリに戻ってくるまでは少しウトウトしたものの(どうしても見るのが夜中の2時頃になってしまうので・・)、追っ手が迫ってくる中盤以降は眠気も吹っ飛んで楽しめました。パリというコンパクトにまとまっている街で展開するのも面白かったです。NYだったらミニ・クーパーもそぐわない感じだし。
ところでマット・デイモンは、本国ではハンサムの部類に属するのかしら・・どうなんでしょう。まあ美的感覚なんて人それぞれだし、私と家人が「美人」「ハンサム」と規定する人も違ったりするから一概には言えませんが、やっぱりマット君のお顔は独特です。でも彼はこの役にはとても合ってました(顔で役柄を判断するのもどうかと思うけどさ)。相手役のフランカ・ポテンテは初めて動くのを見ましたが、素敵な女優さんでした。ヨーロッパが舞台ですが、ほとんどの人が英語だったので、録画だけしてて見てない「ラン・ローラ・ラン」を見て、今度はフランカが母国語のドイツ語をしゃべっているのを堪能しよう(ドイツ語の響きが好きなのです)。このほか、ジェイソンを追う「教授」がカッコよかった。クライヴ・オーウェンという人でした。彼はマイク・ニコルズ監督の「クローサー」という映画で今年のゴールデン・グローブ賞を受賞してます。 またジェイソンの上司役でクリス・クーパーが出ていますが、本当に色々と化ける人ですね。この映画では、日本版を作るとしたら津嘉山正種とかがやりそうな役なんですが、津嘉山正種が「アダプテーション」のあの役は絶対やりそうにないものね〜。 #
by poyance
| 2005-02-15 22:03
| 映画
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