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カテゴリ:本( 19 )
読書記録〜旅行記とエッセイの夏
この夏はほとんど小説は読まず旅行記ばかり読んでいました。

b0062149_2028949.jpg『カシタンカ・ねむい』
『可愛い女、犬を連れた奥さん』(チェーホフ、岩波文庫)

戯曲というジャンルが苦手で読んでいなかったチェーホフの短編集が出たので読んでみたところ、とても面白かった。もっと感情に訴えるタイプの作品なのかと思っていたら、わりと冷めた目線で語られていてしみじみとした気分にさせられます。神西清の訳もすばらしく、日本語の文章も堪能しました。

『アジアロード』(小林紀晴、講談社文庫)
『いつも旅のなか』(角田光代、角川文庫)

旅行記読書の皮切りは鮮やかな写真がたくさん散りばめられた『アジアロード』。しかし、現地の実情に触れたり、人びとと交流したりしても、結局筆者が行き着くのは「自分探し」であって、ある種のナルシスティックな雰囲気が常に漂っているのがなじめませんでした。写真はいいのに・・ 後者は人気作家(小説は読んだことがありません)の旅に関するエッセイで、楽しく読めました。でも知らない人にあんなにたやすくフラフラついていって大丈夫なのだろうか。


b0062149_20394929.jpg『イカ干しは日向の匂い』(武田花、角川春樹事務所)

この人のモノクロームでちょっと寂しい写真と母百合子さんからセンスを受け継いだような文章がとても好きです。彼女が被写体にする猫さんたちもワイルドでブサ可愛くて(表紙の猫さんは美人さんですが)いい。








b0062149_20475942.jpg『謝謝!チャイニーズ』
『転がる香港に苔は生えない』
『銭湯の女神』(文春文庫)
『愚か者、中国をゆく』(光文社新書)
『迷子の自由』(朝日新聞社、以上星野博美)

変換前後の香港へ留学、その後中国を旅した筆者の中国への思いがあふれた記録の数々。その真面目な文章からは、今の時代と折り合いをつけるのに苦労してそうな不器用で頑固な性格がにじみでていて、それがまたいいのです。女性のエッセイとしてはあまり見ないタイプの人で好き嫌いが分かれると思いますが、これからも文章を書き続けてほしい人(本業はカメラマンだけれど)です。

『何でも見てやろう』(小田実、講談社文庫)
『もの食う人びと』(辺見庸、角川文庫)

以前新聞でおすすめ旅行記として挙げられていた本です。小田実は社会活動家、というイメージが強かったのですが、ここでは好奇心旺盛でバイタリティーあふれる向こう見ずな小田青年が、わずかばかりのお金で欧米からさらにはインドまで旅し続ける過程が語られています。タイトル通り何にでも興味を抱き飛び込んで行く姿勢が潔く痛快です。後者はこちらもタイトルが示すごとく「食べる」という観点から世界各国を旅した記録で、深刻な問題を抱える地域が選ばれているにもかかわらず、文章は説教臭いわけでもなくとても面白く読めます。新聞で取り上げられていた旅行記はヒットなものが多かったなあ。もう一作ずっと探していた犬養道子の『お嬢さん放浪記』(中公文庫)も先日ブックオフで見つけてようやく読めましたが、こちらも秀作。

『古道具 中野商店』(川上弘美、新潮文庫)

読みたかった小説が文庫化されたので早速購入。古道具屋、というのはとても魅力的な職業だし、川上作品では好きな方。脇役ながら、とてもエロティックな文章を書くサキコさんの存在が効いています。

b0062149_1182633.jpg『シズコさん』(新潮社)
『役に立たない日々』(朝日新聞出版)
『ふつうがえらい』
『がんばりません』(新潮文庫、以上佐野洋子)

絵本は全然読んだ事がないんですが、エッセイの文章がとても好きな佐野さんの本を一挙に4冊読書。歯に衣着せぬ、というか裏表のない表現を読むと、いつも元気をもらえます。しかしその彼女を今の彼女たらしめたのは、母親との関係が大きく関わっているのだなあと考えさせられたのは『シズコさん』です。4冊のなかでは『役に立たない日々』の長いスパンに渡る文集が面白く、韓流に目覚め、ヨン様〜ビョン様から果ては長瀬〜妻夫木という「男遍歴」が楽しい。ガンで余命幾ばくもない、という彼女のほうからこれほどのバイタリティを頂くという不思議さ・・
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by poyance | 2008-09-19 21:09 |
読書記録 エッセイばやり
小説を読む気力が次第になくなってきて、このごろはエッセイに手が伸びることが多くなっています。

『大使たち』(ヘンリー・ジェイムズ)岩波文庫
『ダブリンの人びと』(ジェイムズ・ジョイス)ちくま文庫

前回の投稿のときに入れ忘れていたものを2点。『大使たち』はこれまで読んだヘンリー・ジェイムズの長編でもっとも読みづらかったです。内容は面白いのだけれども、「書かれていないこと」を推察するのが難解でした。それに訳文が苦手です。どうもこの訳者の文章は性に合わない(でもこの人のが多いのが難)。行方昭夫さんの訳で読みたいなあ・・ ジョイスは読んでいるとアイルランドの町や人びとの姿が目に浮かんでくるようです。『ユリシーズ』(それも柳瀬氏の派手な訳)のイメージが強いのでこういう地味な作品に触れると何だか安心します。


b0062149_213274.jpg『映画の頭脳破壊』(中原昌也、文藝春秋)
『シネマの記憶喪失』(阿部和重、中原昌也、文藝春秋)

映画好きの作家が最近の作品をネタにした対談集。この人の映画の趣味はわりと自分と合うので面白く読みました。K・ナイト・シャマランやウェス・アンダーソンを高く評価しているところや「ゾディアック」でフィンチャーを見直したとか言ってるところなどそうそうと思いながら読んでました。蓮見さんを交えてのクリント・イーストウッド談義や「宇宙戦争」以降のスピルバーグの再評価も楽しかった。



b0062149_21485729.jpg『味と映画の歳時記』
『むかしの味』
『散歩のとき何か食べたくなって』(新潮文庫)
『映画を食べる』(河出文庫)
『食卓のつぶやき』(朝日文庫)
『ル・パスタン』(文春文庫)
『よい匂いのする一夜』
『作家の四季』(講談社文庫)以上、池波正太郎
『あの日、鬼平先生は何を食べたか 池波正太郎フランス旅日記』
(佐藤隆介、NHK出版)

急に池波正太郎のエッセイが読みたくなり、一挙に読書。食べ物の話もいいのだけれど、映画や旅に関するものも楽しいです。時代劇の人、という印象が強いですがフランス映画にも詳しいし、フランスも何度も旅行しているフランス好きです(その旅行のときの様子は佐藤氏の本に書かれているのですが、大金をポンと彼に渡したきり道中の切り盛りは彼にまかせるという豪快ぶり)。モダンな感覚も備えていて、ジャームッシュの初期作品をいたく気に入っていたというのが面白い。「ブロークン・フラワーズ」の感想も聞いてみたかった・・


『案外、買い物好き』(村上龍、幻冬舎)

いつも行っている銀行に置いてある雑誌に連載されていて、待ち時間に楽しく読んでいた村上氏の買い物エッセイが単行本化。彼も買うときは一挙に買うのがすごい。イタリアでシャツやTシャツを買い込んでウン十万って、そらみんな驚きます。とはいえそれらを着た姿を拝見する機会もなく残念。中田英寿の応援に行ってイタリアで買い物に目覚めたというけれど、ヒデ引退の後はどこで買い物をしているのだろう。



b0062149_21555288.jpg『イギリスはおいしい』
『イギリスは愉快だ』
『イギリスはおいしい2』
『リンボウ先生 イギリスへ帰る』(林望、文春文庫)

この人のエッセイも手が伸びかけてやめて、の連続だったのですが、ついに読みました。ずっと英文学者の方だと思っていたのだけれど、国文学の先生だったのですね。なるほど文章もそんな感じがします。生真面目ななかに独特のユーモアがあり、特に最初の2作はとても面白かったです。イギリス行きたいな・・



b0062149_2225570.jpg『シネマ坊主3』(松本人志、日経BP社)

出ないのかなと思いながら前2作を読み返していた矢先に3が出ました。連載中に自分の映画も公開されたとあって、自作の採点もしています。あいかわらず映画の見方はとてもまともで、特にストーリーに対するツッコミは鋭い。目下監督第2作めを企画中らしいですが、どんな作品になるかまったく見当がつきませんね・・






b0062149_2265578.jpg『ヨーロッパ退屈日記』
『女たちよ!』
『再び女たちよ!』(伊丹十三、新潮文庫)

最後は伊丹十三のエッセイ。文章は大変キザで皮肉たっぷりなのに、イヤミはあまり感じられず粋で魅力的なエッセイでした。恥ずかしながら、彼がグラフィック・デザイナーでもあったとか、単独でヨーロッパに渡り、欧米の映画に出演していたとか全く知りませんでした。『退屈日記』が書かれたのは50年近く前なのにとても新鮮で少しも古くささを感じません。靴を買いにイギリスからイタリアまで車を飛ばすなど、彼も相当な豪傑です。自分で描いた表紙や挿絵もすばらしい。

エッセイのなかに「正しい目玉焼きの食べ方」というのがあるのですが、これを読んでいたら森田芳光の「家族ゲーム」で、父親役の伊丹さんが堅焼きになってしまった目玉焼きを見て「チュルチュルできないじゃないか!」と言っていたシーンを思い出しました。私は映画監督よりも俳優としての伊丹十三が好きで、「峠の群像」の吉良上野介だとか、ジョージ・チャキリスがラフカディオ・ハーンを演じた「日本の面影」でハーンが赴任した学校の先生だとか、市川崑の「我輩は猫である」の迷亭さんだとか、思い出深い役柄が今でも浮かんできます。もし自分が映画監督だったら、絶対内田百閒の「山高帽子」を映画化したくて、主人公の青地役は伊丹さんにやってもらいたいなあとずっと思っていました。
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by poyance | 2008-06-20 21:10 |
久々の読書記録
前の投稿から半年以上たってしまい、何をどの順に読んだかもうろ覚えです。映画と違って本の感想はまとめづらくて書くのがおっくうになってしまうのです・・ 記憶を辿ってみると、案外読んだ冊数が少ない。途中で挫折したものを入れるとこの倍くらいは読んでいると思うのですが、それにしても勉強不足ですな・・ とりあえず思い起こせるもののタイトルだけは記しておきます。

b0062149_2045848.jpg『澁澤龍彦との日々』(澁澤龍子、白水社)

シブサワさんは、本当は読んどいたほうがいいと思うんだけれども、なぜか触手がのびない人なのです。しかし、この奥様の書いた本はちょっと気になって、横道からのシブサワ入門してみました。それにしても龍子さん、きれいです。



『吉屋信子 父の果/未知の月日』(みすず書房)
『自伝的女流文壇史』(吉屋信子、中公文庫)

少女小説で有名な作家ですが、このみすずの短編集はそれとは違った趣の作品が集めてあって興味深かったです。『自伝的〜』は自分と何らか交流があった女性作家についてのエッセイで、柔らかい口調で述べられているものの、時に辛辣、そして時に強い自尊心をうかがわせます。このあと少女小説にもトライしたけれど、食傷気味になり頓挫。


『窓の灯』(青山七恵、河出文庫)

芥川賞作家の作品集。このところの受賞者のなかではわりと好きな人かもしれない。


b0062149_2111046.jpgLes fillettes chantantes
Olivier 1940
(Robert Sabatier, Le livre de poche)

福音館のオリヴィエ・シリーズの続き。福音館では3冊で完結のように扱われていて、それ以降はもう翻訳されない雰囲気だったので、原書に挑戦。知らない単語がたくさん出てくるにもかかわらず調べなくても話の内容はわかりやすいです。オリヴィエの初体験やその後の経験談(それも年上の人妻ばかり)が出てきたりするので、やっぱり少年少女向けの文庫には入らないわな・・ オリヴィエ・シリーズはあと3冊ありますが、また時間をおいて読んでみようと思います。


『ヨーロッパぶらりぶらり』
『日本ぶらりぶらり』(山下清、ちくま文庫)

旅行記は好きな分野ですが、この「裸の大将」の旅行記はそのなかでもかなり面白かった。彼の素直な目を通して見られると、ヨーロッパもほかの旅行記とは違った姿となって表れます。文章もくせになります。


『反近代文学史』(中条省平、中公文庫)
『坑夫』(夏目漱石、新潮文庫)

FBNにも書いたけれど、中条さんの作品分析はどれも興味深い。その作品を魅力的に感じさせる才能に長けた人だと思います。この本のなかでは漱石が唯一批判されている、というけれど、それでも漱石が読みたくなるくらいです。この後漱石の異色作『坑夫』を読みましたが、異様なともいえる冒頭の物語展開と『坊ちゃん』や『三四郎』あたりの青年口調の組み合わせが新鮮でした。


『ギャスケル短編集』(岩波文庫)
『白衣の女』(ウィルキー・コリンズ、岩波文庫)
『贖罪』(イアン・マキューアン、新潮文庫)

今年に入ってからはもっぱらイギリスものばかり読んでいます。上の2作はディケンズに認められた作家の作品。前者は女性で少々教訓話じみた部分もありますが、面白く読みました。後者は3冊ものという長い作品でしたが、サスペンス的要素が豊富で一気に読みました。最後の作品は映画「つぐない」の原作です。前半はちょっとエレガントすぎて読みづらかったのですが、後半の戦争時の話になるとがぜん面白くなりました。感動的な結末なのだけれど、全体的に技巧的なところが鼻につく、と言えなくもない。私はカズオ・イシグロのほうがしっくり来ます。
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by poyance | 2008-04-02 02:29 |
夏休みの読書記録
この夏は、色々なことで気ぜわしかったのと、あまりに暑かったのもあって、ヘビーな本には全く手が伸びず、軽めなものを選んで読書していましたが、それなりに面白い本に出会うことができました。結構「有名人本」をチョイスしてますね。でも芸能関係の人にはときどきはっとさせられるような文章を書く人がいて、今回読んだ片桐はいりさんの本などは、下手なエッセイストの本なんかよりずっと面白かったです。



b0062149_20452515.jpgまずは三谷家の猫の写真が載っていて思わず買ってしまった、女優の小林聡美さんのエッセイ『マダム小林の優雅な生活』(幻冬舎文庫)。「味写」と呼べそうな写真もさることながら、彼女のさばさばした文章も楽しい。この後『凛々乙女』『東京100発ガール』『案じるより団子汁』『キウィおこぼれ留学記』と次々に読み続けていきましたが、どれも文章から彼女の声が聞こえてきそうでした。

そういえば「やっぱり猫が好き」の3人で今やっているビールのCM、結構好きです(特に最後の室井さんが)。言ってみればあれは、「551」のCM(ってどの辺りまで放映されているんだろうか)と同じパターンで相当ベタですよね〜。



b0062149_2058568.jpgこの後よく読んでいるブログで取り上げられていて興味を持ち、同じく女優つながりで、片桐はいりさんの『わたしのマトカ』(幻冬舎)を。映画「かもめ食堂」(録画だけしてまだ観ていない・・)の撮影で、ほとんど前情報もないまま訪れたフィンランド旅行記です。北欧で流れるゆったりした時間や、もの静かだけれど親切な人々との交流を彼女独特のやさしい目線で語られており、彼女の文章は初めて本格的に書いたとは思えないほど、味があります。

その後、2作目の『グアテマラの弟』もすぐに読みました。急にこの南米の国へ旅立ち、音信不通だった実弟(この人も相当ユニーク)のもとへ訪れた顛末記ですが、それだけではなくて、最後まで読むとこれは実のところ「家族」というものを見つめた文章だったのです。最終章などはじんときます。彼女の文章はとてもまじめな感じだけれど、どこか力が抜けて笑えるところもあって、まるで彼女も敬愛するアキ・カウリスマキの映画のようです。



b0062149_2242016.jpg新聞などで取り上げられ気になっていた『らも 中島らもとの三十五年』(中島美代子、集英社)を次に。中島らもは、小説は数えるほどしか読んでいないのだけれど、音楽ブログでも触れたラジオ番組や、「プレイガイドジャーナル」(ってわかってもらえるだろうか)で連載していた「啓蒙かまぼこ新聞」、そして「どんぶり5656」といった深夜の前衛TV番組などを通してずっと行動が気になる人でした。ラジオ番組での彼は、ときとして「あ〜イッちゃってるなあ」と感じることがあったのですが、その当時のこともこの本を読んでそうだったのかと納得しました。夫人である著者の、さりげないようでいて、実は非常に赤裸々でディープな内容の文章が、それほど不快感を覚えることなく読めるのは、やはりその人柄によるものなのでしょうか。関西のシド&ナンシーみたいな2人は、そうとう滅茶苦茶な生活を歩むことになるのですが、出会うべくして出会ったカップルだったのだなあと思います。

この後『雪沼とその周辺』(堀江敏幸、新潮文庫)を読みましたが、これに関してはFBNで書こうと思っています。それから、少女文学も読みたくなって、新潮文庫の『赤毛のアン』シリーズも並行して読んでました。子供の頃ダイジェスト版で読んだ気になっていたら、今回知らない話も多くてちゃんと読んでいなかったことがわかりました。イヤというくらい善人がたくさん出てくるので、疲れきったときに読むとなごみます。これまで5冊読了しましたが、シリーズ最後まで読むべきかしら・・
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by poyance | 2007-09-18 22:29 |
読書記録 4ヶ月分
前にも書いたように、読んだ本それぞれの感想はなんだか書きづらいので、備忘録として題名を記しておきます。

b0062149_1515545.jpg4〜5月にかけては、再び金井美恵子月間となり、本屋とネットを活用して作品を集めまくりました。

『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』
『目白雑録1、2』
『快適生活研究』 (以上朝日出版社)
『待つこと、忘れること?』
『切りぬき美術館 スクラップ・ギャラリー』(以上平凡社)
『遊興一匹 迷い猫あずかってます』(新潮社)

あまりの毒の強さに並行して読もうとしていた高橋源一郎の『ニッポンの小説』を断念してしまったくらいです。この中でも『快適生活研究』は、登場人物(特にアキコさん)のキャラクターが強烈で面白かったです。これは『彼女(たち)・・・』と同じく目白四部作の続編となる作品で桃子さんたちのその後もわかって楽しく読めました。しかし金井さんはハスミさんに甘くシマダさんに辛いのは何故? それも笑ってしまうくらい徹底してるし・・


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あまりにも集中して金井作品を読み続けたので、今度は違うタイプのものを求めていたところに、クリスチャン・オステールの新作 Sur La Dune (Les Éditions de Minuit) が出ました。「新しい生活」を始める前に、家が砂に埋まった友人夫婦を助けに訪ねてみるも、夫婦間に不和が生じてすでにその場におらず、泊まる場所すらも手配されていないし、おまけにホテルは満室。仕方なく面識のない男とホテルで同室になるが、やがて別室に泊まっていたその男の妻に惹かれてしまう・・・という、オステールらしい先の読めない展開で、そこはかとない可笑しさが漂うところもいつもながらです。しかし今回は普段以上にフランス語が読みづらく辞書なしでは筋を追うのがやっとでした・・



b0062149_1523922.jpg『須賀敦子全集 第2巻』(河出文庫)

モランディを思わせる装丁が気になっていた全集の第2巻を選んだのは、少女時代の思い出などを中心に構成されていたからです。出てくる地名に親しみのあるものが多いので、それも興味深かったです。清らかながら凛とした所があり、そしてどこか人を寄せつけない崇高さを備えた彼女の文章を読んでいると、すっと背筋が伸びるような感じがします。ゆっくりと少しずつ読んで行きたい作品集です。



『変な映画を観た!!』(大槻ケンヂ、ちくま文庫)
『映画一日一本』(芝山幹郎、朝日文庫)

映画関係を2冊。大槻さんのは手塚眞の「星くず兄弟の伝説」が取り上げられていたので、思わず手に取ってしまいました。やっぱりあれはトンデモ映画だったのか・・でも高木完や戸川京子ちゃんがとても可愛かったことと、尾崎紀世彦が右胸を撃たれたシーンが感動的だったことは今でもよく覚えてます。映画館に2回観に行ったし。その他の映画(特にホラーもの)についても独特の観点が楽しい本です。芝山さんのは、タイトル通り365本の映画を集めていて、観ていない作品の解説など面白く読みましたが、同じ監督、同じ路線のものが連続したりするので、もう少しヴァラエティに富んでいたらいいのになあ〜。


『南洋通信』(中島敦、中公文庫)

戦時中の生活を扱った作品が好きで、今回はパラオに官吏として赴任した若き作家の書簡集(を中心にした記録・作品集)を読みました。国語の教科書で読んだあの硬質な文章の書き手、というイメージからは少し違って、家族思いで、役人であることに違和感を感じる一人の純粋な青年の思いが綴られていて、この作家に対する興味がとても高まりました。

今は大佛次郎の『終戦日記』(文春文庫)に取りかかっていますが、こちらも当時の生活の記録として読みごたえがあります。百鬼園先生の『東京焼盡』もまた読みたくなってきました。
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by poyance | 2007-07-30 22:29 |
読書記録
ずいぶん間があいてしまったので、思い出せる分だけ書いておきます。

『軽いめまい』(金井美恵子、講談社文庫)

前回から続けて金井作品を。絶版になっていた文庫を古本屋で見つけたものです。圧巻は最初と最後にあるスーパーマーケット内部の描写。モノの名前が雪崩のように読者に襲いかかります。


b0062149_1452446.jpg『シンセミア』(朝日文庫)
『ニッポニア・ニッポン』(新潮文庫)
『アメリカの夜』(講談社文庫、以上阿部和重)

前に読んだ『グランド・フィナーレ』ではよくわからなかった阿部和重作品ですが、読みたかった『シンセミア』が文庫化されたので再挑戦。かなり嫌悪感を覚える内容とはいえ、中盤からはまり4巻一気に読みました。映画畑出身ということもあり、作品にも映画的な性格が多分に感じられます。クライマックスのシーンなどは特に読むと映像がバーッと頭に浮かんできました。映画化したら面白いだろうけれど、規制が厳しいかもしれない。
その後、他の2作品も読んでみましたが、結局のところデビュー作『アメリカの夜』が一番面白かったです。テンションが次第に高まり最後に大爆発、という構図はこの時点で完成されているんですね。気難しく見えるが、どこか笑える文体も生きていると思います。


b0062149_14521963.jpg『ロリータ』(ウラジミール・ナボコフ、新潮文庫)

恥ずかしながら、この名作を今まで読んでおりませんでしたが、年初めの読書として新訳版でのぞみました。ジェレミー・アイアンズ主演版の映画のイメージが強かったのですが(これも恥ずかしながらキューブリック版は未見)、あの映画はこの小説のほんの一部しか反映していない、というよりも小説とは別物だということがよくわかりました。随所に散りばめられた言葉遊びや色々な文学作品をふまえた表現、伏線を張り巡らせたミステリー仕立ての複雑な構成などの点から、何通りもの楽しみ方ができる傑作ですね。新訳はどうか、というとすらすら読めないような文章になっていて、ん?と思ったのですが、後でナボコフの文章自体が相当デコボコしたもので、それをふまえた訳文にした、という訳者の言明を見て納得しました。


『浮世の画家』(カズオ・イシグロ、ハヤカワepi文庫)

初期作品がついに重版となり早速読みました。今では大家として名が通っている老画家が抱える過去が、現在進行している娘の結婚話とからめて描かれています。現在の物語のところどころで過去を振り返る、そして隠されていた事柄が次第に明らかになる、というスタイルは定番、というかさすがにこう続けられると飽きてきました。別の構成の小説も読んでみたいです・・


『いつか晴れた日に/分別と多感』(ジェイン・オースティン、キネマ旬報社)

アン・リー版の映画を観ていたのと、ハードカバー本だったので読んでいなかったオースティン作品をやっと読みました。この物語ではほとんどのカップルが「不釣り合い」であるのが面白く、誰と誰が結ばれるのか終わりのほうまで予想がつきませんでした(アン・リーの映画の内容はかなり忘れてたので・・)。内容とは関係ない描写まで、(時として意地悪い)オースティンの目が行き届いていていつもながら楽しく読めました。ただ物語の結末がかなりあっけない(特にマリオン)のが少々物足りないです。もう一度映画版も観直そうと思います。マリオン=ケイト・ウィンスレットというのはなかなかいいキャスティングですね。
ハードカバー版を読み終えた頃にちくま文庫版があることを発見。別訳なので、今それも読んでいます。何回読んでも楽しいな〜。


『テレーズ・ラカン』(エミール・ゾラ、岩波文庫)

ゾラの『パリの胃袋』を読もうかと思ったのですが、これもハードカバーなので先に文庫ものを。自己を押し殺して病弱な男と結婚したテレーズが、浮気相手と共謀で夫を殺すというもの。周到な計画を立てて、誰にも怪しまれずにようやく浮気相手と再婚したものの、二人は幻覚に悩まされノイローゼ状態になります。テレーズはもっとずぶとい神経の持主かと思ってたんですけど、ちょっと印象が違いました。二人の関係が険悪になる後半部分がつらくて飛ばし読みしてしまいました・・
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by poyance | 2007-03-31 14:54 |
読書記録
いつになく現代ものばかり読んでいます。

b0062149_20403084.jpg『インド旅行記1・2』(中谷美紀、幻冬舎文庫)

旅行記はたまにとても読みたくなるジャンルの本です。違う世界の日常へ入り込み共感や違和感を覚える、という感覚がたまらないのでしょう。どこそこの名所へ行った、という記述よりも、何を食べたとか泊まる所がどうだった、だの些末な話がたっぷりあるほうがより好みです。その点ではこの本は前者後者半々くらいの割合で成り立っているでしょうか。けれどもこの中谷さんのかなり潔癖性なところ(チューブのワサビを食後に飲み込む、というのはすごい)とインドという国にのめりこまずにある程度客観的に物事を眺めているところが面白くてあっという間に読みました。おそらく3、4も今後発売されると思われるので楽しみです。


b0062149_20504414.jpg『ニシノユキヒコの恋と冒険』(新潮文庫)
『光ってみえるもの、あれは』(中公文庫、以上川上弘美)

古本探しでいつもお世話になっている I 先生がとてもよいとおっしゃっていたので、川上さんの『光ってみえる・・』を文庫化早々読みました。確かに今まで読んだ川上作品の中でいちばん好きです。挿入されている文学作品の一節も素敵です。いつものようにちょっと(というよりかなり)変わった人たちが、ちょっと(かなり、というのもある)変わった行動をとる話なのだけれど、それを全く自然に感じさせるのが、川上さんの文体の力(力が入っていないように思わせるところもすばらしい)です。ただ、話の内容が後半長崎に舞台が移ってから説明的になりすぎているのが残念。そこまでは青春小説として傑作だと思います。『ニシノユキヒコ』も後半説明的になっているように感じます。
ところで、『光って・・』を映画化するとしたら大鳥さんはぜひ忌野清志郎でキャスティングしてもらいたいです。


b0062149_2283398.jpg『噂の娘』(講談社文庫)
『小春日和 インディアン・サマー』
『文章教室』
『タマや』
『道化師の恋』(河出文庫、以上金井美恵子)

以前、金井さんの初期作品を読んで挫折しました。「私、ヌーヴォー・ロマンのことをよく知ってますの、フフフ」みたいな雰囲気が充満しているように感じられてダメだったのです。今度は最近の作品で、昭和中期の美容院が舞台の少女小説、ということで再チャレンジしてみましたが、これは面白かった。一文が気が遠くなるくらい長いのでエネルギーを要しますが、それだけに読みごたえがあります。引き続き「目白四部作」と呼ばれる4つの小説に挑戦。『小春日和』の桃子さんはちょうど私と同じ年代にあたり、あの80年代後半ごろの「オリーブ」を購読し、ニューアカにかぶれ、ジャームッシュだのミニシアター系の映画に夢中になっていた女の子たちについての記述を読んでいると、何だか自分のことを言われているみたいでこっぱずかしい。でも今回はこの毒を多分に含んだ文章も嫌みに思えず、溢れ出るペダンチスムも頑張ってるねえとカワイク思えてくるのが不思議です。



b0062149_22225883.jpg『格闘する者に○(まる)』(三浦しをん、新潮文庫)

最後はこれまた I 先生ご推薦の三浦さんの作品。川上さん以降のさらに新しい世代の人の作品はまだ読んでいないものが多いですね・・ 三浦さんは思っていたのと作風がかなり違いました。もっとファンタジックなイメージを勝手に持っていましたが、実際読んでいると非常に安定した文章を書かれるのだなあと思いました。この作品は主人公の性格もあるのだろうけれど、自信がみなぎっている感じです。
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by poyance | 2006-11-25 22:30 |
読書記録
いつも気分にまかせて本を選んでいるので、統一感がないです・・

b0062149_1501163.jpg『冷血』(トルーマン・カポーティ、新潮文庫)

映画の「カポーティ」公開に合わせて方々で作品が出版されていますね〜。そのなかで映画で取り上げられている彼のノンフィクション作品を読みました。平穏な町で起きた一家惨殺事件を、その家族と犯人、および捜査する側と、多角的に描いています。「誰々は何年生まれで、云々」といった単なる調査記録ではなく、先が気になるような「読ませる」構成になっていて、特に事件への持って行き方がうまいです。



『上海』(横光利一、講談社文芸文庫)

長編小説が読みたくなり、古本屋で買ったままほっていたこの作品を。物語の筋よりも、「新感覚派」節が炸裂した上海の街の描写がとてもカッコいい。このディープな街で激動の時代を生きる日本人の男たちの群像劇ですが、中心人物の参木さんが国籍問わず女性にモテまくりで笑えます。


『日々の麺麭・風貌』(小山清、講談社文芸文庫)

次は題名に惹かれて買ったこの作品。日常的な題材を扱った短編集です。「小品」という感じの地味な内容のものが多いけれど、冒頭の「落穂拾い」がとてもよかったです。ここに出てくるひとりで古本屋を営む女の子がとても魅力的です。


b0062149_1543219.jpg『文学賞メッタ斬り』
『文学賞メッタ斬り リターンズ』(大森望・豊崎由美、PARCO出版)

日本における様々な文学賞の位置づけと、その受賞作・および選考に対する批評、と書くとおカタい感じがしますが、タイトル通り著者2人がかなり言いたい放題にやってます。最初に読んだ『リターンズ』のほうでは、前々から疑問に思っていた芥川賞の選評をさんざん茶化してくれていて、選考基準なんていい加減なものなんだなあと思いました。そうはいってもお二人の趣味と私の趣味はぜんぜん違うので、彼らが評価している現代作家や作品でピンとくるのはなかなかないようです・・



b0062149_155025.jpg『いつか王子駅で』(堀江敏幸、新潮文庫)
『熊の敷石』(講談社文庫)

『メッタ斬り』と並行して堀江さんの作品を読んでいたのですが、2人の評価はかなり高いですね。さして大きな事件も起こらない話ばかりなのに、いつしか引き込まれるその文章力はすごいです。うねうねとした長文の末に軽いオチがつく、という進め方には、私の好きなクリスチャン・オステールにも通じるものがあります。何でも堀江さんの作品のなかに、オステールの『アルクイユの橋』に触れた一節があるとか。それだけでなく作品中には文学的な脱線がしばしば見られ、日々の出来事や、競馬などといった事柄と同等に語られているのですが、文章から人柄のよさがにじみ出ているだけに、悪意のない、だからかえってタチの悪いペダンチスムに思えて困惑するときがあります。そういう文学に関する言及の少ない「城址にて」などは非常に心地よく読めるので、もう少し他の作品を読んでみたいと思っています。


『号泣する準備はできていた』(江國香織、新潮文庫)

久々に江國さんの作品を読みましたが、文体がかなり変化したように感じました。以前にも増して冷淡になっているような。初期作品に見られた詩的な表現が消えているようにも思います。それはこの作品に限ったことなんだろうか。この作品に対する『メッタ斬り』のお二人の評価も高い(好みは別として)ですが、個人的には初期の作品のほうが好きですね。
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by poyance | 2006-10-17 01:59 |
読書記録
しばらくの間、「勉強」というか「修行」と課して、フランス語の本を読んでいました。そういうわけで読書速度がガタ落ちです。

b0062149_136463.jpgまずは Georges Perec の W ou les souvenirs de l'enfance 『W あるいは子供時代の思い出』 (Gallimard)。子供の頃の思い出と、ペレックが10代初期に書いたものを手直ししたという物語が交互に配置されています。思い出といっても断片的で、非常にあいまいだったり間違い覚えをしていたりで、正確ではありません。また物語のほうは、亡命して名前を変えてひそかに生活している男が、今の名前が実在の少年のものであったことを知らされ、その少年が消息不明になったらしい「W」という島へ探しに行く、というところまでは筋があるものの、後半からはその「W」という奇妙な島についてえんえんとルポルタージュ風に語られ、前半の物語は忘れ去られてしまったかのようです。「W」のあらゆるものごとの中心は「スポーツ」なのですが、自由で楽しい雰囲気どころか、おかしな規則や慣習でがんじがらめになっている感じです。このスポーツ島に関する記述が非常に事細かで、後半からはすっとばして読んでしまいました・・とはいえ、単に時系列で出来事を並べるのではなく、記憶のあいまいさや、子供時代のテクスト、およびそれに対する現在の感じ方もひっくるめて、「自分」をとらえようとする面白い「自伝」だと思います。

b0062149_1515966.jpg次はアゴタ・クリストフの L'heure grise 『灰色の時』(Seuil)。4つの戯曲が収められています。最初の John et Joe 「ジョンとジョー」がとぼけた味わいで楽しい。2人のやりとりは時に『ゴドーを待ちながら』のウラジミールとエストラゴンを思い出させます。フランス語も簡単ですいすい読めてうれしい。2番目の La clé de l'ascenseur 「エレベーターの鍵」は、「いつか王子様が」モノを逆手にとった皮肉っぽい戯曲。3番目 Un rat qui passe 「通り過ぎる鼠」は、舞台が2分割され、人物が双方を行き来し、メタ戯曲にもなっている難解な作品。実際にはどんなふうに演じられているのか見てみたいです。最後の L'heure grise ou le dernier client 「灰色の時 または 最後の客」は男女のグダグダした会話がえんえん続く(でも結末は衝撃的)。

b0062149_1383560.jpg最後はジャン=フィリップ・トゥーサンの最新作(といっても出たのは去年)でメディシス賞を受賞した Fuir 『逃げさる』(Minuit)。前作『愛しあう』の続編で、上海・北京・イタリアの小島で展開される3部構成の物語です。中国での話が面白く、謎の人物チャン(張)と話者が心動かされるリー(李)という2人の中国人男女が魅力的です。サングラスをかけたり、表情がなかなか読めないチャンの描写を読んでいると、いつしかウォン・カーウァイ監督をイメージしてました。そうなるとリーはチャン・ツィイーかフェイ・ウォンあたりかしら。
第3部に入ると、話者の存在感が希薄になり、実験的な試みも見られるのですが、前の2部とは雰囲気が異なっていて、浮いているようにも思えます。
トゥーサンの小説はデビュー頃と比べると、だいぶ作風が変わってきました。1文1文も長くなって、蛇行するようなものも多くなりました。特にこの作品は感傷的な表現が多く、特に元恋人マリーに関する記述はかなりロマンティックで、飄々とした彼の文章に慣れている読者のなかには困惑を覚える人もいるかもしれません。ユーモアもかなり控えめになってます。『愛しあう』は淡白さと感情的な部分のバランスがいい具合だなと思っていたのですが、今作は後者のほうが勝っているようで、好き嫌いが分かれるんじゃないかな〜。
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by poyance | 2006-08-18 01:54 |
読書記録
まずは新しいものに挑戦!ということで『上海ベイビー』( 衛慧、文春文庫)を。中国の現代文学を初めて読んだのですが、饒舌体のフランス現代小説を読んでいるような印象を受けました。もっとも作者は西欧ものを多々読んでいるようなので、色々と吸収したものが詰め込まれている感じ。でも主人公のトッポイ女の子が、王子様のような男の子と恋におちるものの、彼の性的不能に悩み、彼もドラッグにはまっていく・・という筋書きはやけにメロドラマチックだなあと思いながら読んでいました。

b0062149_1952459.jpg気になる作家の新作が立て続けに翻訳されました。

原書で読もうかと思っていたらアゴタ・クリストフの『昨日』がタイミングよくハヤカワepi文庫から出版されたので早速読みました。一部分だけ読んでいたのですが、それで想像していたのとは全然違う話でした。素っ気ないと言えるくらいシンプルな文体に秘められた力強さも相変わらずです。

これと並行して同作家の Analphabète (Edition ZOE、『文盲』というタイトルでこちらも邦訳が最近出ました)も読んでいました。こちらは自伝で、これを読むと今までの作品に、彼女の過去が大きく関わっているのかがわかります。彼女が幼い頃に書いた詩が、そのまま『昨日』に使われていたりして、また作品を再読したくなります。また言語の問題が彼女のなかでいかに重要であるかも痛感させられます。「母国語でないフランス語においては、私はいまだ文盲だ。フランス語で書く、ということは文盲の挑戦なのだ」という最後の一編がとても重いです。

b0062149_19522050.jpgそしてカズオ・イシグロの新作『わたしを離さないで』(早川書房)。介護人の物語、とだけ聞いていたので老人問題でも扱っているのかと思っていたら、全く違ってSFよりの小説でした。主人公が今の次点から過去を振り返るというスタイルで、ある思い出がまた別の思い出につながり、最後には第三者が真相を明かす、という構成は『わたしたちが孤児だったころ』と同じなのは気になりましたが、完成度はこちらのほうが数段上のように思います。主人公が過ごした環境の不自然さや「提供」などのよくわからない言葉を読み解くフレーズが中盤に何気なく挿入されていて、度肝を抜かれました(カンのいい人はそれまでに気がついているのだろうけれど)。抑制された文章で物語は静かに進められていきますが、タイトルにもなっている曲(Never Let Me Go)にまつわるエピソードは、どれも涙を誘います。小川洋子の『密やかな結晶』なんかが好きな人ははまるんじゃないでしょうか。
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by poyance | 2006-05-27 19:59 |


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