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読書記録
まずは新しいものに挑戦!ということで『上海ベイビー』( 衛慧、文春文庫)を。中国の現代文学を初めて読んだのですが、饒舌体のフランス現代小説を読んでいるような印象を受けました。もっとも作者は西欧ものを多々読んでいるようなので、色々と吸収したものが詰め込まれている感じ。でも主人公のトッポイ女の子が、王子様のような男の子と恋におちるものの、彼の性的不能に悩み、彼もドラッグにはまっていく・・という筋書きはやけにメロドラマチックだなあと思いながら読んでいました。

b0062149_1952459.jpg気になる作家の新作が立て続けに翻訳されました。

原書で読もうかと思っていたらアゴタ・クリストフの『昨日』がタイミングよくハヤカワepi文庫から出版されたので早速読みました。一部分だけ読んでいたのですが、それで想像していたのとは全然違う話でした。素っ気ないと言えるくらいシンプルな文体に秘められた力強さも相変わらずです。

これと並行して同作家の Analphabète (Edition ZOE、『文盲』というタイトルでこちらも邦訳が最近出ました)も読んでいました。こちらは自伝で、これを読むと今までの作品に、彼女の過去が大きく関わっているのかがわかります。彼女が幼い頃に書いた詩が、そのまま『昨日』に使われていたりして、また作品を再読したくなります。また言語の問題が彼女のなかでいかに重要であるかも痛感させられます。「母国語でないフランス語においては、私はいまだ文盲だ。フランス語で書く、ということは文盲の挑戦なのだ」という最後の一編がとても重いです。

b0062149_19522050.jpgそしてカズオ・イシグロの新作『わたしを離さないで』(早川書房)。介護人の物語、とだけ聞いていたので老人問題でも扱っているのかと思っていたら、全く違ってSFよりの小説でした。主人公が今の次点から過去を振り返るというスタイルで、ある思い出がまた別の思い出につながり、最後には第三者が真相を明かす、という構成は『わたしたちが孤児だったころ』と同じなのは気になりましたが、完成度はこちらのほうが数段上のように思います。主人公が過ごした環境の不自然さや「提供」などのよくわからない言葉を読み解くフレーズが中盤に何気なく挿入されていて、度肝を抜かれました(カンのいい人はそれまでに気がついているのだろうけれど)。抑制された文章で物語は静かに進められていきますが、タイトルにもなっている曲(Never Let Me Go)にまつわるエピソードは、どれも涙を誘います。小川洋子の『密やかな結晶』なんかが好きな人ははまるんじゃないでしょうか。
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by poyance | 2006-05-27 19:59 |
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