監督:レオス・カラックス
公開年、制作国:2012年、フランス/ドイツ 梅田ガーデンシネマにて鑑賞。カラックスの13年ぶり(!)の新作であり、Les Inrocks や、自国映画に厳しい「カイエ・デュ・シネマ」誌が2012年のベストワンに選んでいる、というだけでも期待が高まる。とはいえほとんど事前情報なしに観たので、最初「え? ナニナニ?」とわけわからなかったのだが、だんだんと状況がわかってきて可笑しく楽しく観られた(特に前半部分は最高)。ポスターからもわかるように、デヴィッド・リンチが多分に意識された作りで、映画館の描き方、犬の使い方、最初に登場する船のような家をはじめ、運転手のセリーヌやあざのある男といった登場人物まで、『マルホランド・ドライブ』や『ロスト・ハイウェイ』などを彷彿とさせる。 しかし、ここではリンチだけでなく作品自体がさまざまな映画へのオマージュになっていて、それもストレートではないカラックス流の味付けがされたオマージュである。ネタバレになるので詳しくは言わないが、『ゴジラ』や『キング・コング』やジャック・ドゥミのミュージカル、はたまた大島渚の『マックス・モナムール』にいたるまで、色々な映画が複数組み合わされたり断片的に用いられたりして引用されている。すでに主人公の名前がオスカー(アカデミー賞!)という時点でこれは映画のための映画なんだなと思うべきだろう。『汚れた血』でのヌーヴェル・ヴァーグへのオマージュ(ジュリエット・ビノシュ演ずるアンナはまさにゴダール作品のアンナ・カリーナの引用だった)を考えれば、スタイルは違えどカラックス自身は変わらず、ということを表しているのではないだろうか。 その『汚れた血』のことを回想したジュリー・デルピーが「カラックスは、こちらが映画のことで意見を言うと、『〜監督はこう言った、‥監督はこう撮った』と言って反論した」と語ったのをどこかで読んだことがある。自分の分身ドニ・ラヴァンを今回も主人公に据えることで、オスカーは過去の巨匠たちに敬意を持ちつつも、その呪縛から逃れられない自己の姿なのであり、オスカーが永遠に演じなければならないように、自分も映画の世界から逃れることはできない・・(そして作品もなかなか作れない・・)という複雑な心情が描かれているように思えた。 ドニ・ラヴァンはその監督の期待に応えて、縦横無尽に動き回っている。オスカーは彼じゃないと絶対できないだろう。エヴァ・メンデスやカイリー・ミノーグといった女優の人選がすごく意外だったのだが、配役を観たら納得。カイリーがなかなかいい味を出していた。 『TOKYO!』で出てきたメルド君が今回も登場して大暴れ。『TOKYO!』ではよく理解できなかったのだが、今回はそれがうまく消化されて作品に溶け込んでいる。結構慎み深い(笑)性格もわかり、この場面がいちばん楽しかった。 ところで最後の5分間はなくていいんでない?と思った。この部分さえなければ文句なく傑作と言えるのになあと思う。残念・・
by poyance
| 2013-05-05 17:38
| 映画
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