監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
公開年、制作国:2010年、カナダ/フランス WOWOWで録画したものを鑑賞。先に観た友人から「すごい話だった」と聞いていたので、色々推測しながら観る。隠された事実が色々でてきて、大きな秘密がすでに中盤に明らかになるので、あとの時間をどう持たせるのかと思っていたら、最後にもう一波乱が・・ うっすらと予想はできたものの、やはりやるせない気持ちになる。宗教と戦争に翻弄されてきた女性が今まで気を確かに持って生きられたのは、子どもの存在だったという、これは「母親映画」なのだなあと思う。なので不在だった父親の出現が母親を打ちのめす、という構図が興味深い。もっともその父親は特殊な父親なのだが・・ その母親を演じていたルブナ・アザバルの抑制された演技が映画を引き締めている。タイトルが示すがごとく物語の内容は壮絶なのだが、映画そのものはとても静かに見える。それは彼女を始め、他の俳優たちが感情に走らない演技に徹しているからだろう。ハリウッド映画や邦画だとなかなかこういうわけにはいかない。 後でこの映画は『オイディプス王』を原案にしていると聞いてなるほど、と思った。この神話を下敷きにした物語は数多くあれど、松本俊夫の『薔薇の葬列』に匹敵するくらいおもしろい(という表現は適切ではないかもしれないが)脚色だった。映画自体は、前半現在と過去の場面が交互にあらわれ、かつ若い頃の母親と娘の顔が最初判別しづらかったので混乱したが、途中からはグッと内容がしまってきて引き込まれていく。 さらに映像がすばらしく、特に人のいないさびれた街角や廃墟をとらえたショットに惹かれる。映画冒頭にレディオヘッドの You and whose army? とともにスローモーションの映像が流れるのだが、PVか?と思わせるくらいぴったりとマッチしていた。映画を観終わってから再び見返すと、また違う重い響きをもって聴こえてくるのだけれど・・
by poyance
| 2012-09-22 17:51
| 映画
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